ビーチボーイ&ビーチガールのクロニクル

南国ビーチで、ゼロからリゾートを建設し、営業し暮らした記録です

工事の初日



(某年、午前8時30分現場着)


ジャジャーン!
私は、黄色い暴走セレスバス(乗合い)からドタッと降り立った。
きちんと停止してくれないので、気を付けないと転ぶ。
場所は、セブ島南部のO市。
目の前には、フィリピンの伝統的な木造家屋、2階建ての廃屋が威圧するように建っている。




今日からいよいよ始まりだ。
決闘に行くガンマンの心境である。
腰にガンベルトがあったら、間違いなく銃の装弾を確認しただろう。
冗談ではない。
確かに、今日からこの廃屋の後方に広がる土地が、私の長期の戦場となるのである。
今日から始まる私の戦いは、この土地にビーチリゾートを創ることである。
1500平米の細長い土地に、応援してくれるお客さんや友人がくつろげる施設をおったてることだ。
完成すれば私の勝ち。
挫折すれば、負けである。
勝ちか負けか、勝負はどちらかしかないのである。
結果は神のみぞ知る。
ふと前を見るとボロ屋の陰に敵が6人。
いや、敵ではなかった、ありゃ味方だった、手はじめに雇ったワーカー6人が、黙々と穴掘りしていた。
知っているのは、かしらを頼んだエリックだけ、他の連中は知らない。
「みんな!おはよう!」「まじめにやってるか?」
「イエッサー!」
当たり前だ、いくらフィリピン人でも初日からはサボらない。
廃屋に住ませている雇用した管理人に、メンバーの名前を聞いてメモする。
長年の酒で鍛えられた私の脳みそは、記憶力が弱点だ。
この溝はブロック塀の基礎である。
この国では、土地を買ったらすぐ塀を建てないといけない、というのは常識だ。
そうしないといろいろ面倒が起きることがある。
それから歩いて海岸までの敷地、土地の境界の石などチェックする。
エリックと必要な材料の打ち合わせ。
セメント、ブロック、鉄筋、針金、材木、ドラム缶、ホース、バケツ・・・などなど。
オーッ、またお金が出て行く。
これから毎日のように、カネがバサバサと飛んで出ていく日々の始まりだ。
ついでに、「今日は初日だ!」「終わったらみんなで飲め!」と200ペソ、エリックに渡す。
200ペソ=500円、6人で200、ケチクセーな、と思わないでネ。
この国の人には、金は無いと思わせても、有ると思わせてもいけない。

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