エリック
右がエリック。
さて、働き者の多いウチの職人の中では、今いちばんマジメで仕事が信用できるのは、エリックだ。
だいたいこの国の人々は、長く居ればいるほど働かなくなる・・・というヤッカイな性癖がある。
私などもあちこちで長いこと、この国の人達と共に仕事をして、ちょっと苦労しながら実感している。
いちばん良く働くのは、雇いたての1週間くらいだ。
もちろんフィリピン人でも、並の日本人顔負けの気配りと頭のキレを持つ人もいる。
しかし、スーパーや大店舗・工場など大勢の人を雇用する職場では、いわゆる正社員は非常に少なく、たいていは、6ヶ月以下の雇用契約社員である。
(6か月を超える雇用は『正規社員』として、経営者側は、様々な『権利』を労働者に保証しなければならなくなるので避けたい)
*上の話は10年以上前の比国のことだが、図らずも現在の日本と同様のようです。
したがって、人材を短期間で、次々と使い捨てていく。
こういう雇用スタイルには弊害もあるが、楽天的で飽きっぽい性格が一般的なフィリピンでは、止むを得ないような気がする。
連続雇用は正規社員とみなされるので、ごく少数の向上心の強い人には、1か月の間をおいて、同じ職場に再雇用される道がある。
(しかしその『再雇用』も、大体は同じく『非正規スタッフ』です)
エリックの場合、ウチの最初のスタッフの一人であり、ちょうど1年経つが、変わることなく1年前同様に、コツコツと仕事をこなしていく。
まぁ彼の場合は、美人の奥さんが毎年ポロポロと子供を産むので、仕事を辞められないという経緯もあるが・・・
さて本題の電気配線。
クラブハウスの電気配線は(容量=200アンペアということもあって)、国が認めた資格を持つ、電気工事会社に委託した。
このスタイルだと費用がかさむ。
1号コテージは、試しにエリックにやらせたのだが、なんら問題は起きていない。
それならば2号コテージも・・・と言うことになる。
誰がするにしろ、配線図面を書き、材料を見積もり仕入れ、作業の指示を出し検査するのは私なのだから、出来上がりはそう変わるものではないのである。
天井を張る前に電気配線をする。
画像には、2つのジャンクションボックス(赤い箱)が見えているが・・・
以前、正規の電気工事会社に委託した『クラブハウス』の工事では、屋根裏のボックスで蓋(ふた=カバー)をしていないボックスがいくつも見つかった。
工事完了後、蓋が随分余っていたので、私がチェックしエリックに直させた。
蓋がないと、万一雨漏りしたとき、小動物が侵入したときなどに、漏電や火災の原因になる。
電気配線工事の仕事というのは、集中力が必要だ。
頭の中に(電気の流れの)絵を描き、それを忠実に再現しないと、相手は電気なのでエライ事になる。
また壁に埋め込む配線なども、作業ミスは許されない。
私は、いつも助手を付けず、エリック1人でやらせている。
そうすることによって責任の所在を明らかにして、ミスを未然に防ぐ為だが、エリックも承知していて、私に『助手が欲しい』と言って来たことはない。
彼もそのほうが集中できて楽なのだろう。
コテージ・ベッドルーム内のブレーカーボックス。
ベッドルームに設けたメインのスイッチボードボックス(配電盤)に配線して、ブレーカーをセットする。
コテージ1号&2号の電源は、クラブハウスの予備電源ブレーカーから取っているので、MAX=50アンペアしか出せない。
そのため、各コテージのカテゴリーごとのブレーカーのキャパの設定には、私は大変気を使った。
そんな事はめったに無いと思うが、コテージの3台のエアコンと、電気温水シャワーを全部同時に起動させられたら、50アンペアでも心許ないからだ。
そういう事態が発生した際、なるべくブレーカーが落ちないよう、電力の割り振りに神経を使った。
余談だが、被告の田舎の民家には、あって当たり前のブレーカー(ボックス)が、当たり前のように無い家も多い。
昔ながらの『ヒューズボックス』の家もあるし、そのヒューズがただの銅線に変えられている家もあった。
この国の建物の多くが、漏電による火災で燃えている。
知識の無さが、災いを呼ぶのである。