経営者の仕事とは
資材が届かず、止まってしまった”お座敷”の現場。
このままでは仕事がなくなってしまう。
これは現場の危機であります。
事の次第は、注文した“ブトン”が届かない。
ブトンとは、“BUTONG”。
竹の中でも直径10センチ以上の太い竹です。
それをを縦に割った建材です。
幅5センチ、長さ4メートル、肉厚は1~1.5センチ、400本必要です。
お座敷の屋根材のニッパ椰子を葺くため、トラスの角材に直角に釘付けします。
床もブトンで張る予定です。
それが届きません。
ブトンがないと屋根が葺けない。
床も張れない。
お座敷建設は、先に進めないのであります。
ブトンは1週間前に届くはず・・・でした。
この1週間前というのは、ハナから期待していません。
3日前にフォローアップ(フィリピン英語ではREMINDのような意味でFOLLOW UPがよく使われます)すると、明後日には届ける、という返事でした。
この国では、フォローアップとダブル(時としてトリプル)チェックは最低限(?)のスキルです。
ところが届かず、また電話すると明日届けるという返事でした。
さらにまた届かず、またフォローアップ。
2日後には間違いなく届ける、という話。
そして・・・・また届かない。
もうテキスト(携帯メール)にも、返事は無しです。
こうなると、届く可能性は少ない。
出入りのサプライヤー(資材店)は、ブトンを扱っていないので切り替えもできません。
しばらくお会いしてなかった『約束は、破るためにある』、という正統派フィリピンスタイルを、久々にかまされました。
“責任とは無責任”、私の辞書に責任という言葉はない!、
という人と久々に関わりました。
ここで腹を立ててはいけません。
キレてはいけません。
そうすると、そこでお終いです。
因果応報、自分の過去の所業の罰を、いま受けていると思うといいですな。
そうすると諦めがつきます、私の場合は。
これは一種の“罰ゲーム”です。
だいいち、ここは日本ではありません。
日本の常識は通用しません。
世界は広いです。
ここフィリピンなどは、まだ良いほうの部類です。
私フウテンは、しばらくビーチ沿いで、“考える人”してました。
気が付いたら、首筋が日焼けで少しヒリヒリしてました。
たぶん白髪も増えたでしょう。
現場を休みにすると、ウチの連中に日銭が入りません。
何とか仕事をひねり出さないと、彼らが可哀そうです。
このままでは、明日は現場休み=(彼らは)収入無しとなります。
話は逸れますが、いまどきの日本の経営者は、簡単に社員や労働者の首を切るようですね。
なんか、西洋文明の悪い影響のように思えます。
上の者には、仕事を創り、割り振り、与える責任、があるのではないでしょうか?
それが上に立つ者の仕事そのもの、ではないでしょうか?
それができないということは、上に立つ者としての、あるいは経営者としての資質が疑わしいのではないでしょうか。
ウチのビーチ沿いの右側には、1号コテージがあり、コテージの海側にいま露天風呂とシャワーを作っています。
中央はダイビングボートの収容場所です。
左側には、お座敷レストランを作っていますが、その海側のスペースはまだ手付かずです。
6×9メートルで54㎡。
前々からこの場所は、“海を見渡すビーチレストラン”に、というプランです。
夕方、帰り際。
フウテン:「エンボイ、あそこにド~ンと“でかいストーンテーブル”を1個作りたいんだけど、出来るかい?」
(ストーンといっても、自然石でなくコンクリートですが。)
一瞬、エンボイの軍鶏(シャモ)のような目に、例の光が出ました。
彼の職人根性がピッと刺激された時、こういう目をします。
新しい仕事に手を付けるのが、彼の無上の喜びなのです。
エンボイ:『そんなの簡単だ!・・・大きさは?・・・形は?・・・今すぐかかるか?・・・図面はどこだ~?』
フウテン:「イヤ、まてまて、ドウ、ドウ、ドオ、今日はもう時間だし・・・いま思いついたばかりだから・・・図面はまだないよ・・・仕事なさそうだし、明日からとりかかろうか。」
翌朝、朝食を食べていると管理人おばちゃんルイーラが来て。
ルイ:『サ~、エンボイが図面が欲しいって。』
フウテン:「エッ、何の?」
ルイ:『サ~、テーブル?がどうしたこうしたって、言ってるけど』
フウテン:「エッ、アレッ・・今か?・・・エンボイにあと20分待ってくれと言っておいて。」
すぐ図面3枚を書いて持っていくと、もうエンボイは、キビキビと予定地に積んであった材木をどけていた。
子供に新しいおもちゃを与えるような感じであります。
エンボイが今までやっていた仕事は、すぐ誰かに渡しておっぽり出します。
今回は階段のモルタル仕上げ、すでにジェームスに代わってペタペタしていました。
私も煽られて、巻尺を取ってきて簡単に測量して、施工位置を伝えました。
その1分以内に、くい打ちが始まっていました。
見にくい画像ですが、右の赤シャツが大棟梁エンボイ。
その男エンボイ。
猪突猛進、です。
たまに暴走もします。
かなりチョンボもします。
石頭です。
ウチの棟梁です。
日曜にマーケット(市場)に買い物に行くと、たいてい溜まり場で、仲間と談笑しています。
ウチの子が一緒だと、アイスを買ってくれます。
その男、エンボイにつき、エンボイしています。
さてブトンの情報ですが、サプライヤーが伝えてきました。―――
きこりが山に入って竹を切り出そうとしたら、蜂が襲ってきて刺されて寝込んでいる。
だからもうブトンは手に入らない―――。
うちがブトンを注文したのは、1か月も前です。
今頃に山に入るとはどういうことでしょうか?
たぶん、ただの言い訳オンパレードでしょうが、万一本当だとしても、ザマ~ミロ!と言いたいです。
しかし、これでまた、いちからブトン探しです。
オーケーです。
此れしきの事でクサッテたら、フィリピンには住めません。
艱難辛苦、いくらでも「かかって、きなさいっ!」です。
でも年中この気持ちでいると・・・疲れます・・・・ホント。