小舟の進水式
完成した小舟。
以下のお話の続きです。
さぁ~て・・・・
(以降、画像は奥様の撮影です)
始めて小舟を海水につけた。
私は”進水式”のつもりで、シャンパン代わりのサンミゲルビールをかけた。
私フウテンオヤジに、相応(ふさわ)しい小舟(=オモチャ)が完成してから、その進水式まで数日おきました。
なぜなら、先日頂いた“開運・風水カレンダー”というのがありまして・・・
曰く・・・“一粒万倍日”
これは・・・・
“わずかな種でも撒いておけば、万倍の実りを得る意味。何事をするのも吉とされる日。但し、その日に借金をしたり、逆のことをすると苦労が万倍になるとされているので要注意。”
・・・だそうです。
私フウテンは、義理と人情の渡世人(?)ですので、ゲンをかつぎ、栄えある“一粒万倍日”に進水式を延ばしました。
さて当日、
ビールを舟にかけ、
海の神様に航海の無事を祈り、
ついでに家内安全、無病息災、世界平和、人類皆兄弟なども手当たり次第に祈願して、
棟梁エンボイと2人で海に漕ぎ出しました。
青Tシャツが私、赤がエンボイ。
私は一人で行くか、ヒマな漁師を連れて行こうと思っていました。
ところが、例によって、またエンボイが『俺が行く、子供のころからバンカーボートは得意だった』と、強引に志願してきた。
(これが、失敗=悲劇のもとだった)
海は適度に風と波があり、テストには良い条件です。
穏やか過ぎては、テスト航海になりません。
順調にスタート。
沖に出ました。
左に方向転換。
見る見るうちに沖に出て、さらにポートサイドに向きを変え、近くにある豪快なドロップオフ(=崖のように急に深くなる)のダイブサイトに、小舟を進めていきました。
(陸とは平行に進むので)当然、横波になります。
とその時です。
左側のアウトリガー⁽舟の両側の浮具)の先端が、ちょっと海面下に沈んだと思いきや、そのままゆっくりとしかし確実に、舟が回転していきました。
アラッ?・ラララッ。
本来、水平であるべきの左右のアウトリガーが垂直関係になり、そしてまた水平に落ち着きました。
天と地がひっくり返った。
舟が裏返ったのです。
少しして、舟の横に浮き上がった私とエンボイは、顔を見合わせて苦笑いです。
なぜかと云うと、実は『日本人の作った舟が海に出た!』ということで、海岸には結構見物人が出ていたのです。
(ヒマなヤツラめ!)
恥ずかし~ったら、ありゃしない!
(陸では、かなりウケていたようですが・・・)
大体このくらいの大きさの手漕ぎバンカーボートに、2人乗りでこの海況、それが転覆するなんて普通は、ありえな~いハナシ、なのであります。
エンボイは舟を回転させて乗り込み、水を掻き出しはじめました。
木製の舟でしかもエンジン無しの手漕ぎですから、ひっくり返っても沈むことはありません。
私は、舟に上がると陸の見物人達からまともに見られそうなので、しばら~く、舟の沖側、暖かい海に漬かっておりました。
(エンボイが海水を掻き出し終わらないのに、私も舟に上がると、また沈む可能性もありました)
あまりにみっともなくて、できれば映画”タイタニック”のデュカプリオのように、このまま海の底にゆっくりと、ハカナイ命と共に沈んでしまいたい気分でした。
しかしそれは、私の崇める海の神様に、『海が酒とタバコと加齢臭クサクなる』と文句を言われそうだし、半魚人の私はできないことです。
ですが、こっぱずかしいし・・・初航海で沈⁽チン)・・・。
転覆の原因は何か?
陸に戻り、早速私一人の調査委員会を設置して、原因を究明いたしました。
ポイントは、操船ミスか?舟の設計ミスか?
ここが『争点』であります。
私もかつては、若かった。
“手漕ぎボートダイブ”と称して、ひとりで、ちっぽけなアメンボくらいの手漕ぎバンカーボートに器材とタンクを積み込み、1キロ以上も先のポイントに漕いで行き、調査(=ダイブサイトの)をしていた事もありました。
日本人ではありますが、フィリピンのダブルアウトリガーボートの操船には、自信を持っていました。
今にして思えば、実際その頃は、“YES! I CAN!”で様々なムチャクチャなダイビングに挑戦してました。
今生きているのが不思議なくらいです。
その話はまたの機会にして、ポイントは、手漕ぎバンカーボートの操船には、私は並のフィリピン人よりずっと慣れていると自負していることです。
となると、私の後ろに乗り込んでいたエンボイのせいでしょうか?
別の意味で、『不可能を可能にする男エンボイ』です。
ですから、充分、疑う余地アリですが・・・・
舟にも問題があるかも、と精査しなければなりません。
アウトリガー先端が水没してから、復元せずに、スンナリそのまま沈んでいったのが不審な点です。
塩ビパイプのアウトリガーの長さ太さ重さ、浮力、取り付け位置と角度、そういったものを検証しないとならないです。
とりあえず次は、取り付け角度をいじって再挑戦いたします。
エラそうに言うと、こういうのを専門用語(?)で“シェイクダウン”と言います。
新造船は、テスト航海して改良していくのが当たり前です。
次は絶対に、ひとりで乗り込みます。
「エンボイ、オマエはとりあえず、クロに近いグレーだ。」
「現場の大棟梁としては、間違いなく認めるが、ボートマンには向かない」
疑わしきは罰せず、武士の情けであるぞよ。
だけど、今度は付いてくるなよ~!
*後日談・・・その後、このフィリピンスタイルの小舟は、ずいぶん乗り回しました。
ほとんどは、誰かを乗せて私一人で漕ぎました。
しかし、一度として、転覆していません。
やはり、原因はエンボイとほぼ確定、無論、2度とエンボイは乗せませんでした。