小舟のテスト(再挑戦)
当日の海況、東風(ウチの浜からだと向かい風)2~3m、波高30~50センチ、うねり有り。
さて2度目の小舟のテストであります。
いじった箇所は、とりあえず1箇所だけ。
腕木の前の部分の曲げ具合を調整し、アウトリガーの先を5センチほど以前より上げました。
波に突っ込むことが少なくなるはずです。
実際問題として、バンカーボートというのは、ディンギー⁽小型ヨット)と似たようなもので、乗り手がバランスを崩さないように乗る、というのが前提の乗り物です。
したがって、波風があるときにヘタクソが乗れば、ひっくり返って当然なのであります。
別の船大工の意見も聞いたのですが・・・・
『舟自体には問題ない』
『むしろ、非常に軽くとても良い舟だ』との事でした。
大恥をかいた前回と同じくらいの波と風の日を狙って、テストを敢行いたしました。
(奥様に言わせると、ちょっと前回より波が低いかな? ということです。)
(以降、画像は奥様の撮影です、右端が私)
ウチのスロープを使い、舟を海に出します。
通常は2人で運ぶのですが、情けなくも仰々しくも、4人で運びます。
私フウテンは、打席のイチローさながら、キッと沖を睨みつけ、タイミングを計り舟を押します。
波を読んで、船底が浮いたタイミングで舟を出す。
船底をこすらない適度の深さで乗り込みます。
櫓をつかみ取り、声高らかに「♪うみわよ~おぉ~ぉ、うみわよ~ぉ、でっかい~ぃうみわよ~ぉ♪」・・・・と漕ぎ出します。
(岸からは、ほとんど見えません)
今回はソロ⁽ひとり)なので、波を求めてず~と沖まで出す。
気持ちエ~ッ!
(陸が遠くなるほどに、気分は高揚します)
陸からは見られません。
これは作戦です。
内心は、万一またひっくり返ったら・・・と、そのときの用心で、前回と反対の沖に向かってスタボー⁽右舷)に舵を切りました。
左方向は、『また沈め~!』と呪いをかけている、アホな見物人が大勢いるかも知れないので、敬遠しました。
田舎のフィリピン人は、目が異常にイイ(視力4.0~5.0とか)から油断できません。
作戦成功です。
浜に見物人は見えません。
これで存分にテストできます。
やり過ぎてひっくり返っても、大恥かく事はありません。
武士は、もとい、私のような典型的な日本人は、恥をかくことが大嫌いです。
日本文化は、『恥の文化』です。
日本人代表?として、またひっくり返ったら、また村の噂話のネタです。
そいつだけは避けたいです。
何しろ面白おかしく、はなしに大きく尾ひれがつきますから。
たまったもんじゃ~、あ~りません。
私にも少しはプライドがあります。
そして何事も無く無事テストを終えて、煌(きら)めく波の上を帰ってきました。
(やはり前回は、腕が鈍っていたのか? それとも・・・エンボイ?)
次は、2名乗船のテストです。
現場のスタッフ2人を無理やり呼んで。
エンボイは、なぜか今回は嫌がりました。
怪しいです。
(右端が私)
「行ってこーい!」
かなりのいきおいで乗り出した二人ですが、すぐ帰って来てしまいました。
なんか焦って漕いでいるようでした。
不審な行動です。
前回の沈を見ているし、(フィリピン人は泳げない人が多いので)怖いのでしょうか?
しかしこれでは舟の状態が見れず、テストになりません。
浜に着く前に、
「もっと、沖ィ~!おき~!」
と海へ追い返しました。
ウチのスタッフ全員、“山彦”か?
海は苦手なのでしょうか。
そういえば、現場を始めて1年以上になりますが、いくら暑い日でもうちのスタッフが海に入っているのを(まして泳いでいるのは)、見たことがありません。
現場の休日に、漁師をして稼いだという話も皆無です。
2人は、仕方なくという感じでまた舟を出し、トットとひと回りして帰ってきました。
テスト終了。
今回のテストの結論。
どうやら前回の沈は、(艫にいたエンボイの)操船ミスの可能性が高い。
舟のバランスを云々すると、喫水が高すぎるという事が云えると思う。
小型のバンカーボートの場合には、人は船の中ではなく左右の舷側上に渡した板に腰掛けるように座りますので、結果どうしても[舟+人]の重心が高くなり、不安定さが増します。
軽い1人乗りのときは、なおさらです。
横波によるロールも大きくなります。
そのためバランスを取るのが難しくなり、『慣れ』が必要です。
私は、製作の際、舟の喫水を通常より2インチ高くするようにリクエストしました。
理由は⁽普通に)喫水が低いと、日本人の方が乗った場合、『沈みそう?』・・・と恐怖感を感じるのではないかと考えたからです。
その喫水の高さが、災いしてます。
しかしこれは、『テスト』ということで何も積んでいないせいもあります。
ロープやアンカー、漁の道具や荷物を積めば、当然喫水は下がります。
2人乗りのときは、体重で適度に喫水が下がり安定性が増しますが、アウトリガーの塩ビパイプの浮力がやや小さいようで、波風で万一バランスを崩してアウトリガーを沈ませた場合には、沈する可能性があります。
3インチ径のパイプを使いましたが、4インチがベターかもです。
しかし、3インチでも、操船で充分カバーできる範囲内でしょう。
アウトリガーを大きくすれば、舟の重量も増すし、水の抵抗も大きくなります。
退屈な話が続きますが、海上ではバンカーボートのアウトリガーは、常に両方もしくは片方の一部が水に漬かっています。
片方が大きく水中に沈んだ(船が傾いた)場合、乗り手が櫂を使ったり、重心を移動したりして沈を避けるのが普通、というか慣れれば自然に身体が反応します。
(イメージ的には、車で言う『逆ハン』『カウンター』に近いです)
しかしボートだけの問題として捉えると、水没したアウトリガーの浮力と同じくらい、空中にある、もう片方のアウトリガーの重さが復元力には重要です。
この重量と浮力のバランスが、難しいです。
つまり海水との比重の関係で、重くても浮力のあるものや、軽くても浮力の無いものがあるわけです。
もっと正確に言うと、形状を無視すればですが、体積と重量と浮力(エアースペース)の相関関係ということになります。
車で言えば、キャビンの居住性と空気抵抗値、燃費、動力性能等々のように、それぞれの要素が絡み合い、時には相反し、関連してます。
こんなバンカーボートの小舟でさえ、奥は深~いのです。
まあ、このままで様子を見ることにします。
私も時間が取れれば、さらに操船技術を磨いてみたいと思います。
しかしエンボイめ、アヤッしいなぁ・・・。