『タリサイ』の木で灰皿を作ろう
いくらでもある木っ端の山から、てきとうに材料を選びます。
ところで、ここ1週間ほどですが、日中が急に暑くなってきました(10数年前の3月のことです、フィリピンで最も暑い季節は3~5月)。
息子フィリピン1号の幼稚園も、来週から“夏休み”です。
たいていの学校がそろそろ夏休み。
そうすると学校を締め出されたガキドモ、失礼、子供達がそこいら中に出没します。
映画の“グレムリン”さながらに。
日本と違い、学習塾や習い事、スポーツクラブなど皆無です。
しかも、押しなべて子沢山のフィリピンですから、これから2ヶ月間騒々しいです。
本題に戻します。
家では私しか喫煙しないので、灰皿はひとつあれば充分でした。
しかし、これではどうも人が訪ねてきた時に不自由です。
急遽、思いつきで作りました。
タリサイの木の端材を、”てきとうに”カットします。
フィリピンの物作りのキーワードは、“てきとう”です。
もちろんこの場合の“てきとう”は本来の“適当”という意味ではなく、俗に言う“いいかげん”という意味です。
そしてこの“いいかげん”とは、“好い加減”ではなく、“おざなり”とか“でたらめ”とか言うほうの意味の“いいかげん”です・・・日本語難しい!
フィリピンで物を作るにあたっては、繊細さ、緻密さ、神経こまやかさ、などはもってのほかです。
そういった製品は、日本や他国にいくらでもあります。
そこで勝負すれば敵うわけはなく、面白くもなんともありません。
ここはフィリピンです。
余所にはないもの、ヘタクソさ、雑さ、いい加減さ、をふんだんに盛り込むことによって、フィリピンらしさ、稚拙な作りをあえて演出するのです。
そして、それは“いいかげん”な私にとっても都合の良いことです。
(たかが灰皿作りに、なんて大げさな言い訳でしょう。)
上の写真を見てください。
木の真ん中に穴が開いてます。
これは“タリサイ”の木だからです。
タリサイは、たいていが幹の中心に穴とかスの部分が通っています。
大量生産?
軽く柔らかい木ですので、壷くりも簡単、あっという間に形になります。
上はウチの海際の、タリサイの木。
『タリサイ』は熱帯には珍しく、広葉の落葉樹です。
いつの間にか真っ赤に紅葉して、葉が落ちたと思った時には、次の若葉が茂っています。
まったく、忙(せわ)しない木です。
その実は、フルーツバット(果物を食べるコウモリ)の好物です。
実の種は硬く、フルーツバットは食べません。
しかし、金槌やそこらの石で、実の種を割ると出てくる小さな5ミリくらいの核は、人も食べます。
不味くはないですが、それこそ労多くして実少なしです。
ウチの敷地にあった大きなタリサイの木は、お座敷の化粧柱となりましたが、タリサイのもたらす恩恵の第一は、涼しい日陰でしょう。
海辺のタリサイの木の下で、談笑し、くつろぎ、酒を呑み、昼寝する。
話を戻します。
てきとうにペーパーをかけ、3度塗りのニスで仕上げました。
芯の穴は、底面にエポキシ系接着剤を塗ることによって、塞ぎました。
狙い通りのヘタクソ~な灰皿が出来ました。
この幼稚さこそが、フィリピンの真の民芸品であります。