青銀色の魚
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(ちょっと色が褪せてしまいましたが・・・)
前の道路が何やら騒がしい。
近所の漁師が大漁。
たった今獲れたての魚を大きなバケツに入れて、村人に売りさばいています。
ウチも買ってきました。
ところで、“青銀”という色を知っていますか?
その昔、私がホントのガキンチョだった頃、空き地に出没した“カタ屋”さん。
うちの方では“ねんど屋さん”とも言いました。
60歳以下の方は、知らない人がほとんどでしょうね。
たぶんもう滅びてしまった職業というか、シノギです。
当時は、スポーツクラブも塾も無く、学校が終われば遊び時間の始まりですから、子供達は夢中で様々な遊びに精を出したものであります。
カタヤさんもその遊びのひとつでありました。
ちょっとご説明しますと・・・
小遣いを握り締めて、その地べたに店を開いている親父のところに行き、粘土と型と色つきの粉を買います。
粘土はどこかで掘り出したもの。
型は焼きレンガで出来ていて、鉄腕アトムとかトラの顔とか子供達に人気のありそうな動物やヒーローのデザインがあり、大きさは5~10センチくらいですが、中には20センチ以上の大作まであったように記憶しております。
粉は各色揃っていて、自分の作品に着色するための粉であります。
親父は地面に筵(むしろ)や新聞紙をひいて、型や見本の作品を展示して座っています。
ガキどもは、粘土をうまく練ってセッセと型に嵌め、きれいに取り出し乾かして粉で着色します。
その作品をカタヤさんのところに持っていくと『〇〇点』とか言って採点して、点数を書いた紙をくれます。
そしてその獲得した点数を貯めて、カッコいい大作の型を手に入れることが出来るのです。
当時の子供はみな貧乏ですから、なるべく良い点数をつけて貰って、次の材料や型を入手すべく、技を競い合ったものです。
しかしやはり最初のうちは、ヒビやシワがあったり、着色がはみ出したりと中々良い点数が貰えず、なけなしの小遣いをはたいて、また何度も粘土などを買う羽目になります。
しかし当時の子供というのは、皆がみな器用ですから何回かするうちに、親父の見本と同等の作品を引っさげていくようになります。
そうなると今度は親父が損をする番になってきますが、そこはよくしたもの、世の中はそんなに甘くありません。
親父は、そうなる頃合いを見計らって、忽然と姿を消します。
どこか他所の町に移動するのです。
おそらく同じ場所には、何年かは来ないのでしょう。
またその頃は子供のほうも段々飽きてきてるし、遊びは他にいくらでもあったので、寂しい思いをするのはその日だけです。
ほとんど映画“3丁目の夕日”の世界です。
つまらない話ですいません。
そのカタ屋さんの着色粉に、金や銀と共に“青銀”があったのです。
おそらく青の粉に金属粉を混ぜたものでしょうが、当時としては、実に不思議な、きれいな色でした。
あらためて買ってきたイワシを見ますと、
背中が見事なほど、この“青銀”色に輝く魚体です。
数万年の進化の過程で獲得したであろう、青銀のスパンコールのウロコを隙間なく張ったような、い~い仕事(何がじゃ?)してます。
体型、サイズ、骨や肉の色やウロコの状態が、日本の『マイワシ』と同じです。
味もマイワシと違いません。
南洋の魚にしては脂ものっています。
しかしマイワシと違い、体側の黒い点々がありません。
買ってきたときは、気持ち悪いくらい青銀がビッカビカでした。
また、熱帯の陽光の下では、目を細めずには直視できないほどの強い輝きであります。
今風に「メタリックブルー」と言ってしまうと違います。
もっと深く眩しい色です。
冒頭の画像では、この青銀色が全然出ていません。
青銀を写したのに・・・。
肉眼では明らかに“青銀”なのですが、自然光でデジカメに撮り、PCで見ると青銀が失せます。
何らかの理由で、“青銀”色は再現できないのではないでしょうか?
私の乏しい知識では、理解できません。
魚は水中の生き物です。
したがって、普通は日光を直接その身体に浴びることは、あまりありません。
人に捕獲されて、自由を奪われ、ほぼ死が確定した時に、初めて日の光を直接受けるのでしょう。
そのせいでしょうか。
このイワシに限らず、どの魚も水から出たときは実にキレイな色を出して、美しさを主張します。
自らの死を目前にして、いっとき光り輝くのであります。
(海釣りをする人は分かると思うのですが、水から揚げたとたんに(青物の)魚の色は変わります。
死に様としては、ちょっと羨ましい気がします。
私は、ダイビングでも釣りでも青モノの魚が好きです。
青モノの魚には、金、銀、緑銀、青銀など不思議な色がふんだんにあります。
金属でもないのに、生身の生き物なのに。
塩焼きでいただきました。
とても、おいしゅうございました。
ちなみにお値段のほうは、浜値ですのでキロ80ペソ(約160円)=当時の価格でした。