もう頼むから、穴を気にしてくれ
(型枠の穴、スキマ、コンクリートが漏れる~)
2階のスラブとビームのセメント打ちを控えて、型枠のチェックに忙しい私フウテンである。
どうも、型枠大工さんは雑な仕事をする人が多い、というような印象を30年ほど前(今からだと45年ほど前)に、日本で感じたことがある。
*型枠作りとは鉄筋コンクリートの建築物を作る時、鉄筋の周りを角材とベニヤ板などで囲い、コンクリートのスペースを作る作業。昔は日本でもいちいち手作業、フィリピンの田舎では、多分今でも手作業。
ましてフィリピン人である。
彼らは、大工、左官、鉄筋工、配管なんでも出来る、自分達は「オールラウンドだ!」と自慢げに言うが、裏を返せば取り立てて特技が無いと、みずから宣言しているようなものである。
どれひとつ、いわゆるプロフェッショナルの領域に達していない職人が多い・・・田舎だから当たり前か。
もとよりオールマイティーなダヴィンチや左甚五郎なんて何百年に一人だ。
不肖この私、フウテンがいい例だ。
器用貧乏で何でもそこそここなすが、ひとつひとつはプロの真似ごと以下に過ぎない。
職人芸や「匠の技(たくみのわざ)」というものは、一朝一夕にはできない。
子供のころからの長い修行と向上心が、最低の条件だと私は思う。
テレビ・スマホゲームなどという馬鹿げた麻薬(異論はあるだろうが私はそう思っている)、が蔓延するご時勢では、日本の伝統、職人芸は風前の灯だ。
ここフィリピンでも、型枠はとても雑でヘタだ。
不正確、穴だらけ、曲がっている、隙間だらけ。
このままセメント流したら・・・当然、漏る。
中にスができる。
セメントが流れ、砂利だけが集まった部分ができ、のちに大きなダメージをもたらすかもしれない。
(例、上はボロ屋の柱の基礎、下部はセメントが漏れて砂利だけが見えている)
異物は錆びたり腐ったりして、強度を落とす。
フィリピンでは、セメント打ちの際、セメントが行き渡るように型枠を叩くことはあまりしない。
叩くと型枠の隙間からセメントがどんどん漏れて、砂利しか残らないから、鉄筋棒で突っつくだけで、振動はあまり与えない。
そしてよく知られた話だが、フィリピン人がこねるセメントは異常に水っぽい。
これは暑く乾燥したこの国の気候でやむをえないと思うのだが、初めて見る人は「オイッ!、オーイ!」と叫んでしまうくらい、水ビシャビシャ、病院の3分がゆ状態にするのだ。
エンボイに型枠の細部の修正を頼む。
彼は腕はいいので、わざとというか、何か理由があってそうしている場合も多い。
したがって、頭ごなしの命令ではなく、質問の形(これでイイの?的な)をとる。
そして、私フウテンおやじは、ブツブツと小言を言いながら、そこらのダンボールやボロ布などを拾い集め、型枠の穴と隙間をチマチマと塞ぐ。
(これも本当は良くないが、仕上げのモルタルである程度の修正はきく・・・と思う。
中に落ちている吸殻、釘、ハリガネ、木端、ゴミなど拾う。
しかしクソ暑い中、私も疲れてくるし、寄る年波でそんなに根気も無くなった。
足場に猿のようにぶら下がりながら、片手で穴にダンボール、ウエスなど詰め込む作業はキツい。
いい加減なところで、また明日にしようか、と切り上げるのだ。
疲れる・・・・