キレたら終わりだ、負けだ
(↑)なんとも憎めない奴だ、エンボイ(=画像中央、現場の棟梁を任せています)。
ムスリムのお祈りをしているのではなく、型枠のベニヤの位置を決めてます。
棟梁(フォアマン)という立場ですが、とても仕事熱心、率先して動きます。
しかし、これまでいくつか、アッ!と驚くチョンボをした。
ちょっと思いつくままに以下の通り。
*玄関の柱の位置を間違え、2メートル幅の開口部が、1.5メートルになった。
気が付いたが、時すでに遅く、ブロックの間仕切りを「コ」の字型にする苦肉の策で解決。
*2階に上がる階段の吹き抜け部分に、ビーム(梁=はり)を通そうとした。
これでは階段を上がっていくと、ジャイアント馬場の『脳天唐竹割り!』をまともに受けることになる。
すぐ気が付いて、慌てて止めさせた。
*さらに、階段スペースの中央に柱を建てようとした。
(彼の前世は柱だったのではないか、と思うほどエンボイは柱が好きなのだ。)
これは階段を上がっていくと、ジャイアント馬場ならではの必殺技、『16文キック!』を鼻っぱしらに、さらに銀髪の吸血鬼、フレッドブラッシーの急所打ちを股間に同時に食らうことになる。
(16文キックのみ。 ブラッシーの画像は見つかりませんでした)
これで立っていられる人間はいない。
このケースは、基礎のセメントを打ち鉄筋柱を立ててしまったが、完成する前に気が付いたので、即刻中止して、別の位置に穴を掘り直させ、柱の鉄筋を切って基礎を放棄し、移動して事なきを得た。
他にもあるだろうが、すぐには思い出せない。
*最近では、また柱だ。
12本の通し柱、そのうち2本は1階ではリビングにドーンと建っているので、丸柱とした。
しかし、その2本の柱も2階ではすべて間仕切りの角になるので、設計上は角柱とした。
エンボイはこの2本の柱を、2階も丸く鉄筋を組み、丸いバンドを巻いてしまったのだ。
出来立てホヤホヤの2階のスラブに上がり、これを見た時は、さすがに私フウテンもちょっとたまげた。
早速エンボイに指摘すると、笑ってごまかす。
そして曰く、
「そうだ!丸じゃなかったな、2階は。」
「でも、型枠を四角で作るから、柱は四角になるよ、大丈夫だ!」
「ノープロブレム!ぜんぜん、問題ない。」
(丸く組んだ鉄筋で四角の柱)
「ちが~う、そうじゃな~い!」
「NEVER!、 断じて、そうじゃない!」
(お前が図面を見ないことが問題だ!)
と私は心の中で大きく叫んだ。
ちなみに、彼は(一応)図面が読める。
(日本ではありえないが、フィリピンの職人のほとんどは図面が分からないので見ないのだ。)
図面の分かるエンボイが、他の14人に私の図面を見て指示するやり方なのだ。
この国では、何事もちょっと目を離すと、とんでもないことになる。
(この頃は、私は毎晩のように図面を書いていた。)
しかし、まかせっきりは自殺行為だ。
渡して説明し、工事を度々チェックして、間違いを正す。
ダブルチェック、さらに&トリプルチェック。
この国のひと達と一緒に長年仕事して、もう充分わかっているはずの私でさえ、こんな目に遭ってしまう。
全く油断も隙もあったもんじゃない。
「頼むっ、エンボイ、図面をちゃんと見てくれ~ぃ!」
(心とはウラハラに)あくまで冷静に話す。
ここは彼らの国、私と家族はよそ者だ。
キレたり、怒鳴ったりすれば。。。。。
“ならぬ堪忍、するが堪忍” と言う訳だ。