棟梁エンボイと名人ロッキーの争い
(これが今回の騒動の原因となったセメントモールディング・・・作:ロッキー)
この前エンボイがロッキーに、現場のリストラに絡み、「オマエが辞めろ」と言ったという話は書いた(↓)。
早くもその第二幕が勃発した。
朝7時、私が現場に向かうとロッキーが現場の前の道路にいる。
私=フウテンオヤヂ:「アレ~? おはよう、ロッキー、なんでこんなとこにいるんだ? オマエも仕事だろ? またジンマシンか?(笑)」
(以前ロッキーはカニを食べて、ジンマシンで半日ダウンした。)
ロッキー:「もうオレはここ辞めたんだ。エンボイが頭にくる。辞めちまえと言われた。俺はあちこちから呼ばれているんだ。こんなとこはもう、た~くさんだ。」
冗談じゃない。
左官NO.1のロッキーに辞められたら、この先のプロジェクトに支障が出る。
私:「まて待て、今エンボイと話してくるから、ここ動くなよ。」
現場でエンボイを見つけ、聞いてみる。
エンボイ:「だめだ~、アイツは、もういらね~!、モールディングをコントラクト(請負仕事)で自分の家で作ると言ってるんだ!、身勝手な野郎だ、だから辞めちまえ~!、と言ってやった。」
少し説明すると、この『モールディング』とは、これからロッキーがやろうとしている正面の塀、車ゲートの横に作る門の屋根飾りを指す。
セメントで作る細く長い縁や隅の飾りだ。
(クルマとは別の人用の出入り口。私はそこに日本の武家の門に似せて、屋根風な構造体を造ろうと設計している・・・これをすべてコンクリート造りで。)
正面の塀や門は、これからは担当をロッキーをメインとして構成しよう、と考えていた私としては、チト困るわけだ。
前にも書いたが、『コントラクト』にすると仕事ぶりは目に見えて早くなるが、どうしても『やっつけ仕事』クサくなるので私は好まない。
それにロッキーがモールディングを『コントラクトでやる』と言い、もし、私が許可したなら・・・・。
以前エンボイが『外壁のペンキ塗りをコントラクトにしてくれ』と言った時に、私はっきり断わっっている。
それは、私と”この現場のポリシー”を曲げることになるからだ。
そこでまたロッキーのところに戻る。
(難儀なコッチャ。だが、私は昔からケンカは仲裁する癖がある)
私:「ロッキー、お前はコントラクトでモールディングをやるというのか?」
「今までどおり、日当仕事でやってくれないか?」
ロ:「コントラクトでなけりゃ、仕事しないとは言っていない。」
「現場より、家の方が大きい作業机があるから仕事しやすいし、オレの仕事ぶりを他の連中に見られたくない。」
「だから家でやりたい。あいつらの目の前で仕事して、俺の技術を盗まれるのが頭にくるんだ。」
(実際、私が期待したように、そして彼が自慢したように、この前購入したロッキーの手製のバルコニー用のセメントバルスターは、資材店などで売っているものより、かなり出来が良い。)
このあとのビーチのフェンスや、正面フェンスの私のデザインプランに彼の技術を頼りにしたいという目論みが私にはある。
そうか、ウ~ン。
(そういうことなら、対応策はあるだろう)
・・・・・・・・
私:「よし分かった!」
「じゃあ、こうしよう。」
「うちが必要な材料を全部提供する。そして、お前が家で仕事している間の日当を払う。」
「コレでドウだ、コントラクトじゃないぞ。」
「言ってみれば、コレは出張だ。」
「お前はお前の家に出張するんだ、分かったか?」
(分かるわけ無いか。)
「(とにかく)それでドウだ?」
ロ:『オーケー』
私:「よしっ、そうと決まったら、今から、砂、セメント、6ミリの鉄筋を必要な分だけお前の家に持っていけ。」
「トライシクルチャーターで運べ、費用は俺が払う。 モールディングが完成するまでお前の家で仕事しろ。」
ロ:『OK.サーッ』
次に、エンボイのところにとって返した。
(世話のやける連中だ、まったく。)
フ:「エンボイよ、ロッキーにコントラクトはさせない。」
「(ああだこうだ)・・・・こういうわけでこれは(コントラクトじゃなく)自宅勤務だ、それで、いいだろ。」
(よく分かってないようだが・・・)
エンボイ:『分かったよ』
前回のイザコザと違い、今回はエンボイのほうに”理”があると私は思う。
我々は全員、ひとつのプロジェクトのチームとして働いているのだ。
ワーカーだけでなく、私も奥様も管理人のオバチャンもだ。
勝手なことをしてチームプレーを乱すなら「辞めろ」、と云ったエンボイが正しいと私はみている。
(技術をマネされたくない、というロッキーの気持ちもわかるが・・・)
しかし、私はあとでエンボイには、「現場に何か問題があったら、まず私に話して欲しい」ということ。
それから(エンボイは)「棟梁だが人事権は無いぞ」、と改めて念を押しておいた。
やれやれ、一件落着だ。
朝いちから、とんだトラブルシューティングだ。
そして、多分まだ火種(権力争い?)は残っている。
エンボイもロッキーもクチでは納得したが、心中はまた違うと思う。
私は外国人、まして雇用主だから彼らの心の奥までは入らない(入れない)し、彼らも入れさせないだろう。
約束どおり、4日後にロッキーは現場に復帰した。
彼の作ったモールディングと共に。
作品が冒頭の画像である。
細いセメントモールディングで、これほど出来の良い品を、私はかつて見たことが無い。
画像では分かりにくいが、真っ直ぐで、均質で正確、表面が滑らか、傷ひとつない。
文句の付けようがない。