職人たちの”愛車”
(上は、たぶん自転車部品の寄せ集めによるハンドメイド、日本語の俗語だと『サンコイチ』くらいか)
うちの20人の職人達の多くは、現場から1.5キロくらい離れた「ポブラシオン=POBLACION」=オスロブ市の中心近辺、から通ってくる。
庶民の交通手段の「トライシクル」=お客を乗せるサイドカー付オートバイ、で通うと1日14ペソの通勤交通費がかかる。
だから彼らは、マイカーつまり自転車通勤でやってくる。
そのため、現場には常に沢山の自転車があるのだ。
これがじっくり見るとなかなか面白い。
自転車の歴史と、流行に捉われずモノを大切にする、フィリピン人の部分が見え隠れする。
(ほとんど手作りか。他の多くの自転車のように、ペダルは取れて無くなってしまいシャフトだけ)
(ふる~い、自転車の面影を残している)
(手作り。前の木の部分は子供の2~3人を乗せるための台)
(何故か今風なハンドルが付いている )
(日本で乗っても恥ずかしくないと思われる唯一の自転車 )
次の自転車に注目。
日本製の街乗り用のバイクだ。
ウチの大棟梁:エンボイの自転車だ。
何処で手に入れたかと問うと、アルコイだという。
アルコイはここから北に30分くらい行った場所なのだが、そこの港に日本のジャンク(中古の電気背品や工業製品)を積んだ船が不定期に入港するので、そこで安く売っているという。
アルコイは小さな波止場で国際港じゃないだろうから、関税逃れの密輸入?
時代劇に出てくる『抜け荷』という事か?
フィリピンではメイドインジャパンはたいしたブランド力がある。
自転車等も、『中国製の新車より日本の中古が良い』と云うのは一般的だ。
この自転車、よく見るとシマノの変速機やサカエのアルミギアクランクなど付いていて、エンボイは何も知らないが、ちょっとした物なのだ。
警視庁の鑑札が付いているので、かつては、東京を走っていたのだろう。
しかし、今は何の因果か、ここオスロブに流れ着き、人知れず第二の人(自転車)生を送るわけだ。
変速ギアは全部付いているが、ハンドル手元の変速装置がすっかり無いので、ギア無しと変わらない。
哀れにも、あちらこちらと尾羽枯れ果てているが、よく見るとしっかりとメイドインジャパンを主張している。
見方によっては、"メイドインジャパンの中古"という、フウテンオヤジこと、私の人生と通じるところがあり、何故か親しみが湧く。
しかし、私は、エンボイに使われたくは無い。
どうせなら、かわいいオネエチャンの尻に乗ってもらいたい。
・・・・てなことを云うと、また奥様Mにバカにされる。