ビーチボーイ&ビーチガールのクロニクル

南国ビーチで、ゼロからリゾートを建設し、営業し暮らした記録です

小部屋の用途



さてこの小屋、大きさは縦横2×2.5メートル。


用途は未確定ですが、ガードハウスなどと職人達には話しています。


先日私フウテンが『日本人スタッフの部屋にしようか・・・』と口走ったところ、奥様のモーレツな反対にあいました。


私としては、ちょっと納得できません。


広さは5平米、3畳あります。


天井は2メートルと低いですが、鉄筋コンクリート造りです。


南北2箇所に窓を切ってあり、建物の間ですから、直射日光の当たる時間が少なく涼しいです。


(南洋では、日本と違って陽が当たる家は暑いので好まれません。


『日陰』こそが快適条件であります。)


それなのになんで、『ダメ!』なのでしょうか?


すぐそばにトイレもシャワーもキッチンもあります。


今ウチで一番快適なスペース“お座敷レストラン”も、お客様がいなければ独占状態、私物同然です。


たとえばゴロゴロ昼寝して、屁をこいても誰も文句は言いません。


だいいち、スタッフルームが居心地満点であれば、こもってしまい心身の健康に良くないでしょう。


私室などは、ただ単に寝る場所と考えるべきです。


いや、むしろお座敷で月の光を浴びたり、星空でも眺めながら寝るのも一興でしょう。


生体エネルギーが満ち満ち、活力が湧いてくるでしょう。


(若ければ・・・ですが。)



奥様に、「何で?」と聞きますと、


「狭いからカワイソウ・・・」
だそうです。


『冗談はヨシコさん』です。


日本のTVの報道によりますと、今の日本ではカプセルホテルとかネットカフェだとか、押入れよりも狭いところに起居しながら、働いている方たちが1万人くらい居るそうですよ。


失礼な言い方ですが、そんな蓑虫みたいな部屋に比べれば、この小屋は天国ではないでしょうか。


少なくとも広さは3倍、周囲は「トロピカル・パラダイス」です。





つくづく思い出すのは・・・・


私フウテンが、ダイビングインストラクターとして初めて、あるダイビングリゾートにわらじを脱いだときの事でございます。


あてがわれたスタッフ部屋は、相方(同じ日本人イントラ)との二人部屋。


狭い部屋でホントに何も無く、ほんとに寝る時だけのスペース。


隙間だらけの薄板の壁と、椰子の葉で葺いた屋根で天井はなし、隙間だらけの竹の床張りでした。


小さな窓がひとつだけ、昼なお暗い『部屋』でした。



あの『神田川』も真っ青の部屋です。


壁際に竹のシングルベッドを2つ置くと、通路は30センチくらいしか空きません。


夜中、足を投げ出すと、フウテンの短い足でさえ、その通路を飛び越え相棒のベッドに乗ってしまうほどです。


ある時、何か顔が妙にナマ暖かくて目を覚ますと・・・相棒の顔が目の前にありました。


何かの拍子で、ふたり同時に通路側に顔を出して寝ていたようです。
顔と顔が10センチも離れていませんでした。


彼にも私にもそのケがなくて、幸いでした。




こういう事もありました。


夜中、小用を足しに外に出ようとベッドから足を下ろすと、床がヌルッと滑ります。


あんまり気にせず朝になりました。


起きてビックリ!


シーツのあちこちに血痕があります

自分の身体をチェック・・・どこもなんともありません。


足をおろすと、床も血でヌルヌルです。


大量の血痕です。


相棒はまだ、赤いシミだらけのベッドでグウグー寝てます。


うす暗い部屋の中、目を凝らすと、


床の血が動いてます。


シーツの血も動くのがあります。


・・・正体は赤茶色の毛虫、蛾(ガ)の幼虫、2センチくらいの大きさです。


天井=椰子の葉の屋根、に産み落とされた蛾の卵が、昨夜何百も一斉に孵り、毛虫となって部屋の中に降り注いだのです。


身体の下敷きになったり、足で踏んで潰れると血のような赤い体液が出ます。


夜中に口や鼻から入ってこなくて良かったです。


相棒と二人で、後始末が大変でした。




後日、リゾートのオーナーに話すと、


「君たち!ソリャ、大変だったな、オイ。」


「天井、張らないといかんな。」


とか何とか言っておきながら、結局何もしてくれませんでした。



ちなみにこの部屋は、通称“トリ小屋”と呼ばれていました。
もとは鳥小屋だったのを、改造したからです。


私、そのトリ小屋のあとは、昇進して通称“独居房”生活。


独居房の話しは次の機会に譲りますが、当時、トリ小屋も独居房も私は全然苦ではありませんでした。



当然です。


けっこう犠牲を払って、人様に迷惑をかけて、念願の仕事に就いたのですから。


どんなひどい場所で寝起きしようが、何を食わされようが、平気の平左でした。


いざとなったら、男一匹どうとでもなります。


しかし、むしろその頃は、『海外でダイビングインストラクターとして働く』という希望が叶って、楽しくて仕方なかったでした。


もとより、お金の問題ではありません。



しかしこんな話は、今の人に通用しないでしょうね。


わかってますよ、そんなこと。



でもこれは、若い人にも分かって貰いたいのですが、特別な星の下に生まれた人は別として、普通の人は、何かを手に入れようとしたら、努力する事とは別に、今あるモノを手放さなければならなくなることが往々にしてあります。


天は二物を与えずと言います。


新たに何かを人に与えると同時に、何かを奪ってしまうことがあります。


代償です。


それが受け入れられないのであれば、やたらと夢など抱かないほうが、身のためのような気がします。


つまるところは、名誉、地位、財産、家、家族、才能、学歴、貯金通帳。


そういったモノを持たない人、一般には恵まれていないと思われる人達が、実は一番強いと言えるかも。



夢とはそんな人達のためにあるのでしょう。


そして夢を叶えるチャンスも多い、そういう見方が成り立つのではないでしょうか?


人生“ジェットコースター”です。


上がったり下がったり、スピード、スリル。


ハラハラ、ドキドキが楽しくてワクワクします。



反対に、同じところをクルクルの“メリーゴーラウンド”が好きな方もいるでしょう。
それもまた、善しです。


フウテンも、最近は、年と共にメリーゴーラウンドのほうが、疲れなくていいかなとか思っちゃいんです。

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