「ヤシの葉葺き」屋根・・・その3
そしてニッパが届いた。
10枚=1バンドルごとに括ってある。
『ニッパ』は、ニッパ椰子の葉を細く割った竹を軸にして、葉を2つ折りに束ねてある屋根材だ。
施工前に濡らすとまずいので、すぐ物置にしまう。
現場仕事のコーディネートは全部、奥様と私の仕事である。
資材の手配などを人に頼むと、値段が高かったり、訳のわからない『コミッション』をいつの間にかとられ、建築費がガクッと高くなるのだ。
(日大附属病院ほどではないが・・・2021年12月蛇足の追記)
さてニッパ椰子の葉で作った屋根葺き材『ニッパ』(比国の田舎ではごく一般的な屋根材)。
このニッパとはそもそも何か?
ココナッツの成る”ココヤシ”ではない。
椰子の木の種類は、300種以上とも云われるほどあるのだ。
『ニッパヤシ』というのは、川の河口や汽水域などに群生するヤシである。
幹が無く、地面や水中からいきなり葉が生えてくる種類、簡単に云えば「草(くさ)」だ。
(参考画像)
葉だけを較べると、ココヤシと大差ないと思えるが大きさが全然違う(ニッパの葉はココヤシに比べ小さい)。
自生の北限は日本の沖縄だそうだ。
それはさておき、ニッパを葺き始める。
当然だが、下(軒先)から葺く。
(葉先は最後に切り揃える)
(ニッパを棟に挙げて順次葺いていく)
横一列にスタッフ6人が算木に腰掛け、黙々とニッパをナイロン糸で縛っていく。
ニッパの竹と桟木の竹を結んでいくのだが、海が近いので、釘よりナイロン糸の方が丈夫で長持ちする。
ニッパを葺く間隔により、屋根の厚み・耐久性・丈夫さが変わってくる。
当然、間隔を狭く貼っていった方が良いわけだが、その分、手間と材料費が掛かる。
ウチのコテージは『3インチで』とスタッフに言ったのだが、下から見上げると間隔はかなりまばら。
棟梁:エンボイを通して注意しておいた。
直後は直るのだが、すぐ4インチ~5インチ、つまり普段彼らがやっている幅になるのである。
下からチェックして、何度もリマインドする必要がある。
コテージの屋根の、3分の1ほど葺き終わるのに1日かかった。
まぁウチのスタッフは時間給・日当だから、止むを得まい。
ところでこのニッパ葺き屋根。
最近は田舎の民家でもトタンの屋根が増えてきて、ニッパはだんだん少なくなりつつある。
ニッパ屋根の利点は、1にも2にも涼しさだ。
そしてスコールの際の雨音が少ないこと。
欠点は雨漏りと寿命の短さだ。
雨漏りした時は、ニッパの葉を一枚二枚内側から漏っているところに差し込むと、ピタリと止まる。
(上手い人がやればだが。)
ニッパ屋根の寿命に関しては、各々条件によりピンキリだ。
(ウチのように上から漁網を被せると、風の影響を受けにくくなるので、その分コストは上がるが長持ちする)
耐用年数は2~10年といったところだが、普通5年もすれば痛んでくるので、葺き替え時となる。
実は”コテージの屋根をニッパ葺き”、と決定するにはちょっと勇気が要った。
しかし、日本人のお客様相手の『ビーチコテージ』であるから、やはり『南洋の島』風なニッパが相応しいかなと、最終的に思い切った。
多少の不都合は、工夫する事で改善できると私は思う。