お座敷の周りには
皆様、新年あけましておめでとうございます。
旧年中は、私の拙いブログをご贔屓に戴きまして、大変ありがとうございます。
今年も、10数年前の南洋の島での出来事を、クロニクルとして綴ります。
お読みいただければ、幸甚でございます。
海山人
冒頭画像は、72年前に建てられ、去年取り壊したボロ屋から回収した、木製(ジムリーナ材)バルスター20本です。
それを数度洗い磨き、お座敷の海側に取り付けた。
甦った!
今後は海の前の一等地で、第2の人生を送ってくれ!
木は偉大だ、人間はこうはいかない。
軟らかく軽いジムリーナと云えども、70年以上もたてば、もう虫も白アリも食わない。
隣の空間はコレ(↓)だ。
同じくボロ屋から回収した、鉄製のグリル飾りを4枚。
おそらく『村の鍛冶屋』の手に依るものでしょう。
サビを落とし塗装して、北側に取り付けた。
現代の品より鉄の質が良く、厚いので、形状も保たれ丈夫だ。
こんな海沿いで、70数年経過してもサビが少ないのだ。
不思議だが、事実だから仕方ない。
しかも当時は、セブ島の田舎には溶接が無かったのか、写真のように留めの部分は、板鉄を曲げたもので鉸め⁽かしめ)て固定しているという珍品である。
こういうのは、“なんでも鑑定団”に出したら、値がつくのではないか?
一皮むけば新品に戻る。
私などは、一皮剥かれたらあの世行きだ。
こんな風に、72年前の品々をセッセとはめ込み現代に甦らせても、まだスペースがある。
北の境界の塀に沿った側は、角材を使った。
この角材もボロ屋の古材木で、そのためサイズや形が不揃いだし、釘穴も開いている。
一方、南の通路側はお客様の目に付くので、角材では味気ない。
そこでウチの大棟梁エンボイに、昔の鉄のグリルの横に木を組んで、お任せで何か良いデザインを作れないかと聞いてみた。
そして出来上がったのがこれだ。
四角の中に斜めに部材を組むのは、エンボイの作風、得意技だ。
強度的にも理に適っている。
しかし・・・・
デザインといい、細工の出来といい、どう見ても72年前の作品のほうに分がある。
私は少しがっかりしたが、致し方ないと思い直した。
バルスターや鉄のグリルを作ったのは、昔の専門の職人だが、エンボイは現代の家大工だ。
フィリピンの田舎のレベルでは、こんなものでしょう。
(日本も現代の匠の技が、昔の匠を超えているとは思えないし・・・私見ですが)
しかし今から72年後に、このエンボイの作った木飾りが残っていないことに、私は全財産を賭けてもいいです。
いや、これは失言でした。
私に財産といえるものは、奥様のほかは何もありませんでした。
奥様は、賭けるわけにはいかない。