命しらずの若者『レイニー』現る
どうするのか見ていると、何処からともなく、上半身裸の若者が現れていて、猿以上の身軽さで、てっぺんに到達した。
謎の若者、『レイニー』の登場!(上の画像ではもう木の上です。)
ナンダ、なんだ、何だ?
見物人に聞くと、彼は「レイニー」と言う名前で、難しい椰子の木を切るときは、彼が来るという。
月光仮面のように、ヤキヤックの仕事の危機を感じると、何処からともなく現れるらしい。
段取りは、レイニーがてっぺんの実や葉を全部切り落としてから、ヤキヤックが登り、スンダン(山刀)で上から5メートルくらいずつカットして、安全な高さになったら、根元から切り倒すということだ。
しかし、恐るべし、レイニー。
見るからに危険な作業である。
何の足場も安全策も無い。
地上20メートルの直径30センチほどの椰子のてっぺんで、なぜか嬉しそうに力いっぱい山刀を振るうのである。
(ヤシの)「葉」と言っても、熱帯のヤシの葉は、1本が長さ5~6m重さは5キロからあるのだ。
重いスンダン(山刀)の遠心力を利用して、ひと振りでスパッと切るには力もいる。
ひょろりと長い、ヤシの木の天辺はかなり揺れている。
これは一芸名人とか、プロフェッショナルとかよべない。
蛮行、自殺行為だ。
こんなことを続けていたら、そのうち必ず落ちて死ぬ。
分かっているのか!レイニー!
ニコニコと楽しそうにカタナ振ってる場合でないぞ。
これは、ロシアンルーレットである。
失礼だが彼には、知能というものがあるのだろうか。
『ナントカと煙は高いとこ登る』、と言うことか。
見物人達は、下から何か大声で口々にはやし立てている。
うちの作業員も皆仕事の手を止めて、このショウを見ている。
やがてレイニーは、木の先端を丸裸にして生還した。
今度は、ヤキヤックの出番だ、登っていく。
この場合、愛用のチェーンソーは使えないので、腰に山刀をぶら下げて登っていく。
トップから下がること6mくらいのところで止まり、親の仇とばかりに刀を振るう。
左手で幹に掴まり、右手一本で1分以下で直径30センチを切断してしまう。
さすがの鉄人ヤキヤックも汗びっしょりだ。
顔は常よりさらに恐ろしげで、ヤシの木っ端と共に殺気も散るようだ。
目が合うと怖いからか、見物人もレイニーの時ほど冷やかさない。
そうこうして2本倒したが、頃は夕方。
製材は明日と決まり今日はこれでお開き。
数十人の見物人も散りました。
そしてヤキヤックは、脇にチェーンソーと娘だか姪だかを乗せて、キーコ、キーコと3輪車をこいで帰っていった。
上が、ヤキヤックの愛車