怒涛の巨匠・・・後編
前回の続きです。
巨匠がベッドを作っています。
コテージ用です。
材料は全部古材木、現代の木材より硬く狂わず、虫喰わず腐らず、重いです。
私はサイズと仕様をリクエストするだけです。
そうすれば、ドドンは彼の得意技を出します。
作りたいように作ります。
最初の頃は、細かなデザインまで指図したのですが、そうするとかえってオカシクなるというか、巨匠が委縮することに気が付きました。
できないことはできない・・・のです。
これはコテージ2号用のシングルベッド×2。
金具を使わずにダボで組んでいるので、重いが頑丈だ。
一気に4台同時製作。
全部72年前の古材木を活用。
これはキャビネット。
資材店で購入した合板とモールディングで作った。
塗装中。
同じくコテージ用のキャビネット。
コテージのリビングのサイズに合わせ、衣服入れと物入れを合体デザインした。
2台製作。
こちらはハーフインチ厚の合板で作った。
風通しと使い勝手を考え、ドアは無しとした。
と、これは半分ウソで、ドアを作らせるとボロが出るからが半分、あと半分はそもそも無い方が都合が良いのであります。
ローテーブル。
おなじみタイルテーブルにした。
コテージの応接セット用とベッドのサイドテーブル用。
計6個製作。
合板と古材木、残り物のタイルで製作。
上は、余った合板で、リクエストされたメイド部屋用の物いれを製作。
ひとつだけです。
こうして作られた家具は、日本的な繊細な造りは持ち合わせておりません。
悪く言えば雑です。
しかし下の写真をご覧ください。
これ(↑)はセブ市最大の家具店で買ったベッド(中国製)です。
ベッドのマットをどかし、敷板(すのこ)を少しとった画像です。
そんなに安物ではなく、普通か、やや良い品です。
問題は板(すのこ)の下の、体重とマットの重さを支える角材とその取り付け方法、間隔であります。
これらは、普通は見えない⁽見ない?)場所です。
そして、突然ですが、ジャイアント馬場の頭蓋骨をわしづかみにして、腕一本で引きずり回したあの名レスラー“鉄の爪”こと、フリッツ・フォン・エリック。
いましたね!
覚えてますか?
若くてご存じない方、ゴメンナサイ。
その恐怖の技、“鉄の爪”を連想するわが奥様のスパン25センチという、巨大な手が見えてますね。
つまりこの角材(家の床で言えば根太)の間隔は40センチ強あるのです。
そしてマット(ベッド)の幅は154センチ、いわゆるクイーンサイズです。
木の材質は、こちらで『チャイナ』と呼ぶ、杉のように軟らかな木です。
長さ154センチの角材をベッドの枠に固定しているのは、薄っぺらな金属の差込金具だけです。
何がいいたいのかと云いますと、このベッドは見てくれは良いけどダメ、強度不足です。
このまま半年も使えば、壊れるか、ガタガタになるのは目に見えています。
はっきり云えば、構造に欠陥があります。
次の画像を見てください。
巨匠:ドドンが製作中の、シングルベッドの内部構造です。
シングルですので、横幅は90センチしかありません。
なのに角材は太く、間隔は20センチです。
しかも、木は硬く強く重い、赤ラワンの古材です。
さらに、角材の端と角材の端は、板木で繋いで支えてます。
つまり、角材だけで敷板(すのこ)とマットと人間の重さを受けるのではなく、ベッド全面で荷重を分配してます。
これ以上云う必要はないと思います。
皆様もベッドを買うときは、すのこ板をどかすなり、下から覗き込むなりして、普段見えない部分も見てください。
でも日本なら、『値段のいいものは、良くできている』という大まかな判断基準があるので、安心でしょう。
私は、フィリピンでひどい経験があります。
ある時、パイプベッドを買ったのですが、3日も寝ると、なぜか非常に寝辛くなりました。
下を覗き込むと、私の体重で中央付近のパイプの何本かが、ビローンと曲がってしまってます。
私は体重60数キロしかないので、誰が寝ても結局同じようになったでしょう。
そのパイプベッドは、寝てはいけないベッドだったのでしょうか?
寝たために、ベッドがベーゴマ用のトコのように、すり鉢状になってました。
コリャ~イカンとパイプの曲がりを直し、床からパイプの高さに合わせて、木で大きな箱を作りベッドの下の中央に置きました。
それからはパイプが曲がらず、安眠できるようになりました。
ついでにもうひとつ。
家具とは関係ないですが、先週スーパーでワインオープナーを買いました。
コルクに螺旋をねじ込んでいくと、両サイドのレバーが上がっていくアレです。
家に帰って、試してみました。
ねじ込んでレバーを下げようとしたら、レバーの根元の金属製のギヤがバキバキッと折れて、壊れました。
いわゆる“安かろう、悪かろう”というのは、フィリピンではほぼ100%当たっています。
これはある程度は諦めがつきます。
腹が立つのが、“高かろう、悪かろう”というのも相当数あるのです。
困りものですね。