ドアベルを知らない?
門の横のピンポン。
ウチは国道路沿いの門とゲート(=入り口)から、私どものいるクラブハウスまで、15メートル離れている。
ちなみにコテージのほう、海岸までは100メートルある。
普段は車ゲートも門も、締めてある。
開けっ放しでは、近所の暇な村人や犬猫ニワトリなどが、見学しに?勝手に入ってくるからである。
毎日のように来る建築資材の配達トラックは、ゲートの前でクラクションを盛大に鳴らして到着を合図する。
今のところ他に用事があって訪れる人は、水道や電気の検針、郵便局の配達、物売りくらいである。
そういった人達は、どうするかというと門の前で・・・・
「オ~!」とか、
「だれかいるか~!」
とか、大声を出している。
中には奥ゆかしくて、こちらが気づくまで、じっと門の前で佇(たたず)んでいる人もいる。
これはいかんと、冒頭のコードレスのベル(=ピンポン)を買ってきた。
クラブハウス内の受信機。
(当時は、カメラ付きは無論、会話の出来る門ベルなど存在しなかった)
外部に取り付ける乾電池入りの押しボタンスイッチと、室内のコンセントに差し込む音の出る受信機。
32種類の音や音楽内臓と自慢げに書いてあるが、そんなに必要か大いに疑問だ。
それより音は1種類でいいから、他の性能をアップして欲しいと私は思う。
ゲートの外側に押しボタンスイッチを取り付けていると、さっそく人が集まってきた。
フィリピンの田舎では、誰かが何かを始めると、すぐに人が集まってくる。
“遠慮”という感覚があまり無いので、すぐそばに来てジィーっと見る。
車がエンコしたなんていう時は助かるが、スイッチの取り付けごときでは、うざったい。
野次馬の中で一番バカっぽいヤツ:『何してる?』
私:「・・・ドアベル付けてる。(お前見たことないけど、どこの誰じゃぃ。)」
野次馬の中で一番バカっぽいヤツ:『そんな物つけると、夜中に誰かが持っていっちゃうぞ。』
私:「誰かって誰のことだ?お前が持っていくのか?」
野次馬の中で一番バカっぽいヤツ:『そうかもしれない。』
(まったく不毛な会話・・・・)
しかしだ。
私が取り付けているのは、”スイッチ”なのだ。
おカネでもぶら下げておけば、無くなるかも知れないが、スイッチだけを持っていっても、(そもそも何だか知らないので)、何の役にも立たないことが分からないのだ。
クソ忙しい時に、こんなフザケタ野次馬を相手にしていると、気分も悪くなる。
とっとと終わらせて。
受信機(室内器)をコンセントに差し込んで、テスト。
スイッチと室内器の間は20メートルほど離れ、25センチ厚のコンクリート壁が3枚あるのだがうまく作動した。
問題はそのあとに起きた。
予想外のことだ。
ドアベルがあるのに、誰も押してくれない。
ドアベルを押すことさえためらうほど、遠慮深い人がいる。
そもそも、それが何だか、分からない人がいる。
そこにドアベルがあるのに、相変わらず大声で呼ぶ。
待機電力がもったいないと、受信機をコンセントから外した日もあった。
しかし、ついに、取り付けてから約2週間後・・・・
ナント2週間後だ。
テストを除けば、初めてベルが鳴った。
『キンコロ・・カンコロ・・・』
飲料水の配達人だった。
奥様は、ドアベルが鳴ったことが嬉しくて、そいつにチップをあげそうなくらいだった。
(比国では、水道水は「飲めない」 or 「飲まないほうがいい」ので、飲み水や調理用の水は買う。 日本の様に、水道水を生で飲んでも大丈夫な国は、実は世界では希少だ。)