丸焼きで慰労パーティ
ウチでは、4ヶ月に1回くらいの割りで、”豚の丸焼き”を注文しています。
こちらで云う“レチョン・バブイ”です。
数日前に村の肉屋サンに予約すると、ツブシたての焼きたてのアツアツを、指定の日時に配達してくれます。
フィリピン料理では最高級のご馳走であり、結婚式などお祝いには絶対に欠かせません。
大きさにより値段は違いますが、上の画像のサイズで、棟梁エンボイの半月分の給料と同じです。
ウチのような田舎では、都会よりは安価です。
お客様が見えるとか、村のフィエスタ(お祭り)だとか、何かの折りあれば心優しい奥様がスタッフのために買って振舞っています。
私などは、『ホドホドにしとけば~?』といつも思うのですが、奥様あっての私ですから、強くは言いません。
それとウチの連中は確かに腕は悪いですが、フィリピンの田舎という環境を鑑みれば、実際良くやっているし、「マア、たまにはイイかな~」、とお任せしてしまいます。
庶民はめったなことでは食べれないわけですから、職人たちは、レチョンバブイの配達を目にすると、子供のように、全員がとてつもなく幸せそうな顔になります。
スタッフが喜べば私も嬉しいのです。
彼らは、仕事中であるにも拘わらず、ウキウキして地に足が着かなくなります。
おかしな行動をしたりミスが増えますので、配達はギリギリの午後3時頃で頼みます。
5時、仕事が終わります。
ドリンク&サイドディッシュとして、トゥバ(やし酒)とビール、ディヌグーアン(豚の内臓と血の料理)、魚のBBQ(バーべキュー)やパンシット⁽フィリピン焼きそば⁾などを振る舞います。
奥様としては、普段の労をねぎらい感謝の意を表して、もともと忙しいのに、さらにセカセカと、20個くらいのプレゼントの準備などします。
抽選で全員にプレゼントを渡し、家族のためにと、残った豚の丸焼きのおすそ分けを上げます。
プレゼントの中身は、ひとり一匹ずつのレチョンマノック(鳥の丸焼き)、子供たちへのお菓子などです。
当然スタッフは、満面の笑みで帰路につきますが、ただそれだけのことです。
この国ではお返しや見返りは、期待してはいけませんし、期待できません。
仏教で言う“喜捨”の感覚です。
『お釈迦様の化身である空腹の虎に、ウサギが喜んでその身を投げ出した・・・』というあんな感じです。
実際のところ、日本のように『恩返し』とか『義理人情』などのメンタリティーは、持ち合わせていない人達です。
『金や物の有る人達が、無い人に分けるのは当然のことだろう・・・自分達は貧しいんだから。』と思う人が多いのが実情です。
理不尽なようですが、この国の人に限らず同じ立場になれば、同じように考える人も多いでしょう。
以前、よく日本人男性が、フィリピンなどの外国人女性に大金を貢いだ挙句、『騙された』とか『裏切られた』と云う事件を耳にしました。
これらのケースも、『自分はあれだけのことをしてあげたのに・・・・』の、『・・・』(点々点)の部分に、「だからこれだけのことをして欲しい。」という気持ちがあるのが原因の一端だと思います。
それは日本人には通用しますが、他国ではちょっと無理があるかなと思います。
私は奥様に、
「この国の人に食べ物や金品をいくらあげても、見返りを期待してはいけないぞょ。ドブに棄てたと思うのじゃ。」
さらに、
「そうしないと、その気持ちが元で、相手を見下したり、相手の対応を不満に思い、トラブルのきっかけになったりするから。」
と、たまに念を押しています。
マァ、奥様もこの国に長いですから、当然、分かってはいると思いますが。
『持てる者』と『持てない者』。
今この村では、フウテン一家は『持てる者』と思われているようです。
しかし、本当にそうかは、私には分かりません。
フィリピンも他のアジア諸国のように階級社会です。
ハウスメイドさんやボーイ君との接し方、問題対処の方法、これが一般の日本人は苦手です。
『持てる者』が『持てない者』と、どういう風に付き合ったらよいのか、或いは逆に『持てない者』が『持てる者』とどのように共存するか。
日本に居れば必要ない、余計な神経を使います。