ビーチボーイ&ビーチガールのクロニクル

南国ビーチで、ゼロからリゾートを建設し、営業し暮らした記録です

私は「ドンガバチョ」になる!




(某年某日、午後3時―現場着) 


工事開始後1ヶ月を経て、海に向かう両サイドの塀も終わりのメドが出てきた。


そろそろ、海側=砂浜に面したシーウオールの設計を始めないといけない。


石とセメントで、ぶ厚い壁を作らなければいけない。


ボートを収納するスロープも必要だ。



しかしこの土地をはじめて見てから約4ヶ月、その間に土地がさらわれ海岸線が2メートル近くすでに後退している。





4ヶ月前は、波打ち際にヤシの木が海に向かって斜めに大きく伸びていた。


それがいつの間にか誰かに切られ(=正確には『泥棒』行為です)、今はその根元の土も侵食により海にさらわれた。
料前借りの巻


うちの土地の海側の境界を示す石は、大潮の満潮では海水が洗うのだ。


台風の影響で波が高い日が先週あった。


その所為もある。


地球温暖化で水位の変化も、少しはあるだろう。


しかし、思うに[海岸線]というものは、自然に放って置けば後退するものだと私は考えている。


砂浜だろうと、岩、サンゴ浜だろうと。


河川が陸から砂や岩、砂利を運んでくれる海岸を除けば。


干満の力、波の力は強い。


ジリジリと陸を削る。


土地が抉られ、土が海に入ればサンゴは病む。


魚介類の生態系にも影響する。


沖に向かって、堤防を出せばその周りに砂が寄り、海岸の浸食も同時に防げるのだが、現在のこの国では法で禁止されている。


やっかいだ。


何とかしないといけない。


たとえうちの敷地だけを、頑丈なシーウオールで守っても、周りが浸食されれば、今度はサイドから海が寄せ土地がさらわれ、シーウオールはホントの防波・防潮堤となってしまう。


こうなると、小島のように、海の中に浮かぶ敷地と言う話も、将来的にはまんざら冗談ではなくなるのだ。


そうなったら、どうせなら、そのまま漂流して欲しい。


『ひょっこりひょうたん島』だ。


敷地の形も何となく似ていなくもない。


世界の海を気ままに流れ行くのだ。


19歳から今日までの、私の浮き草人生の締めくくりに、これほど相応しいことはない気がする。



私は、あの
「ドンガバチョ」
になるのだ。「博士」や「ダンディ」よりいいと思う。




(さぁ、歌ってみましょう!)



♪ 波を ちゃぷちゃぷ
ちゃぷちゃぷ かきわけて
(ちゃぷ ちゃぷ ちゃぷ)
雲を すいすい
すいすい 追い抜いて
(すい すい すい)
ひょうたん島は どこへ行く
ぼくらを乗せて どこへ行く
ウ~~ ウ~~
丸い地球の 水平線に
何かがきっと 待っている
苦しいことも あるだろさ
悲しいことも あるだろさ
だけど ぼくらは くじけない
泣くのはいやだ 笑っちゃおう(注)
進め
ひょっこりひょうたん島
ひょっこりひょうたん島
ひょっこりひょうたん島



(シビレル、ゼッ!)


知らない人、多いですよね、年代特定の記事でごめんなさい。

給料の前借り話




(某年某日、午後2時―現場着) 


今日もまじめに働いている。


工事の進み具合のチェック、追加注文のため資材のチェック、敷地のチェックなどルーティンワークをこなす。


チームが仕事に慣れてきたので、今週からワーカーを2人追加した。


計8人だ。


2人ひと組で穴を掘っているので、サボリは無いようだ。


ワーカーを増やすと一人当たりの仕事量=効率が悪くなることがあるので、タイミングが難しい。



次の予定のビーチのシーウオールの構造と材料について、エリックと相談する。


ひとりのワーカーが、「両サイドの塀が終わったら、海側より先に道路側を作るべきだ」と進言してくる。


そうしないと今までのように、近所の連中が勝手にどんどん敷地に入って来てよくないというのが理由だ。


検討の余地があるし、前向きな提言は簡単につぶせないので、「検討する」と答えておく。



帰りのバスを待っていると、遠慮しいしいアドバンス(給料の前借り)が欲しいと何処からともなく聞こえてくる。


フィリピン人得意の前借り、借金である。


(とうとう来たな~)と思ったが。


「なんでー?」と聞くと。


「来週ここの町のフィエスタだから、おカネがいるんだ。」とのこと。


ラテンの文化の濃いフィリピンでは、フィエスタ(フェスティバル=お祭り)は、クリスマスと並ぶビックイベントだ。



「そうか。よ~し、俺に任せろ!」


「奥様Mに掛け合ってやる!」


と太っ腹ふうな責任のがれをして、みんなの希望金額を聞く。


そして・・・・「ところでいつ返すんだ、給料天引きでいいんだろ?」


とたんに皆考え込み、希望額が現実的な金額に変わる。


マジメな連中だ、ホント。


内心笑う。



ルイーラの停めてくれたバスに乗って現場をあとにする。


チームの仕事ぶりは今のところマジメ、合格だ。


今度は、カネの貸し借りはどうかな?


次のチェックポイント、またひとつ”楽しみ”が出来た。